第4期中期目標期間における広島大学のあるべき姿

~「平和を希求する大学」として100年後にも世界で光り輝くために~

理念と基本方針

 広島大学は、人類史上初めての原子爆弾が投下された被爆地広島に1949年に創設された国立の総合研究大学として、平和を希求する精神、新たなる知の創造、豊かな人間性を培う教育、地域社会・国際社会との共存、絶えざる自己変革、という理念5原則の下、世界から期待される役割をたゆまず省察しつつ、自由で平和な国際社会を実現し、人類の幸福に貢献することを使命とする。
 新しい平和科学の理念である「持続可能な発展を導く科学」を実践する世界トップクラスの教育研究拠点を構築し、地域社会と国際社会を繋ぐ知的拠点として、海外大学の誘致やTown(地域住民や地方自治体)とGown(大学)が協働する「Town & Gown構想」の展開により地方共創の主役を担い、多様性を育む自由で平和な国際社会の実現に貢献する「平和を希求しチャレンジする国際的教養人」を育成する。
 また、変動し続ける社会において、100年後にも世界で光り輝き続ける大学であるために、教育・研究・社会貢献・医療・マネジメントのすべてで自主的・自律的な機能強化及び未来への投資を図る。研究者の自由な発想に基づく基礎研究を推進するとともに、地域から地球規模に至る社会課題の解決、とりわけSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、カーボンニュートラルやSociety5.0等の実現に資する取組を強化し、恒久平和と一人ひとりの多様な幸せ(well-being)を実現するための新たな知と価値を常に自己創成する。

1.教育

 平和を希求する理念の下に、国籍や年齢、ジェンダー、障害の有無等にかかわらず、様々な文化的背景や発想を持ち、意欲や好奇心に満ちた人々が世界中から集う多様性あふれるキャンパスを実現する。地域と世界を繋ぐ教育・学修環境を提供し、個々の学生が目標や特性に合わせた主体的で柔軟な学びを実践することにより、豊かな人間性と幅広い教養、秀でた専門的知識と課題発見・解決能力を備え、自由で平和な持続的発展を可能とする国際社会の実現に貢献する人材を育成する。
 社会の変化や科学技術の発展に迅速に対応し、国際的に通用する教育を提供し続けるため、学部教育から大学院教育までの全体を通じて、内容や方法、実施体制について常に見直し改善する。また、国内外の大学や地域とのネットワークを拡大・充実するとともに、デジタル技術を活用した新たな教育環境を提供する。

2.研究

 大学院改組により構築した4研究科体制の下で、ディシプリンに立脚した研究を推進しつつ、従来の学術の枠組みでは困難な地球規模の課題解決と新しい知の創造を目指す異分野融合教育研究環境を整備し、世界トップクラスの多様な研究活動をもとに国際的なネットワークの中での存在感を高める研究分野を強化・発展させる。
 社会課題発見から解決までを繋ぐ分野を越境した自由な発想による独創的な研究を可能とする研究環境をハード及びソフトの両面で強化するとともに、国内外の優れた大学や研究機関と連携して、地域、国及び国際社会が抱える課題の解決に向けたイノベーションを持続的に創出する世界トップクラスの研究拠点となる。また、東日本大震災における原発事故からの福島復興を支える大学として放射線災害に係る医療に関する研究拠点を発展させる。

3.社会貢献と「Town & Gown構想」による新しい社会の共創

 産学官民の連携・協働により、社会課題の発見から解決までを日常的に共有し、社会実装に繋げる環境を構築する。世界的高水準のSDGs活動に取り組む大学として、国際的な産学連携パートナーシップに基づき、地球規模の課題に対する先端的な解決策を世界に先駆けて地域で実践することにより、広島大学「カーボンニュートラル×スマートキャンパス5.0宣言」の実現と、国際競争力を生み出すイノベーションを持続的に創出するエコシステムの構築を目指す。また、デジタルトランスフォーメーションを通じた地方の創生・活性化や、自然災害や感染症等の脅威に対応した安全・安心で強靭な地域社会づくりに貢献する。
 地域や産業界と連携した教育、研究を推進し、グローバルな視野を持ちつつ地域でも活躍できる人材を育成する。
 Town(地域住民や地方自治体)とGown(大学)が協働し、持続的な地域の発展と大学の進化をともに目指す「Town & Gown構想」により、世界中から集う人々がその特性や役割にかかわらず相互に尊重し認め合う、平和で快適な共生社会を実現するまちづくりの主役を担う。
 東広島市及び周辺地域におけるSociety 5.0やスマートシティの実現に向け、東広島市及び民間企業と締結した「包括的な連携推進に関する協定」等に基づき、キャンパスと周辺地域を一体的に捉えた社会実験フィールドを整備するなどにより、大学と地方都市が共に発展するモデルを構築する。
 さらに、SDGs達成に向けて、先頭に立って世界を導く志のある企業や投資家との連携、地域課題解決のための科学技術イノベーションの社会実装の推進、来たるべき未来社会について真剣に考え創生する意欲を持つ学生への学びの機会の提供を通じて、我が国の社会変革の駆動力となる。

4.時空の制約を超えたグローバルキャンパスの形成

 教育・研究・社会貢献活動における国際交流拠点の一つとして、世界から注目される魅力ある大学づくりを推進する。さらに、アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院-広島大学グローバル校の本学キャンパスへの誘致や、広島大学森戸国際高等教育学院北京校の中国北京・首都師範大学内への設置に続き、海外の有力大学が本学で、また本学が海外で教育研究活動を展開し、グローバルキャンパスを拡大する。また、海外拠点を活用し、グローバルなコミュニティを構築することで、世界で活躍する卒業生を含むステークホルダーとの産学官民の連携・協働を図る。
 リアル(現実)とバーチャル(仮想)を有効に組み合わせることにより、時間や空間の制約を超えた、安心かつ安全で安定したグローバルな教育・学修・研究環境を提供する大学となる。

5.教育研究組織

 先進的で革新的な教育研究組織を構築し「持続可能な発展を導く科学」を実践する世界トップクラスの教育研究拠点としての役割を果たす。再編した4研究科を基盤とした研究科等連係課程実施基本組織や新研究科の設置、国内外の大学との連合、地方自治体等とのコンソーシアムの設置、さらに将来を見据えた教育研究組織の見直し等、現行の枠組みにとらわれない柔軟な自己変革を進める。

6.病院

 更なる医療の質的向上を図り、少子高齢化や疾病構造の変化、感染症等人類が直面する新たな脅威に対応する長期的視野に立った効率の良い医療体制を整備する。デジタル技術の更なる活用を図り、質の良い医療及び教育の提供と、教職員のワークライフバランスを両立し得る確固たる経営基盤を確立する。
 先端医療の研究・開発を推進するために必要な人材を確保・育成し、国際競争力を有する世界トップクラスの医療技術の開発を推進する。
 海外拠点病院や協定校と協働して卒後臨床研修・生涯教育に及ぶキャリア形成をシームレスに支援し、医学・医療を牽引する国際性豊かな医療人を育成する。

7.附属学校

 全ての学校園が、大学と一体化して、来たるべき社会の在り方を深く考え、理想に向けて自ら行動できる人材を育成する。幼稚園から高等学校までの学校種を有する強みを活かし、STEAM教育の推進等の先導的な実験的カリキュラムにチャレンジして、我が国の初等・中等・高等教育を包括した教育改革を牽引する。

8.マネジメント

 「持続可能な発展を導く科学」を実践する世界トップクラスの教育研究拠点として、学長のリーダーシップの下、教育、研究、社会貢献及び医療の機能を最大限に発揮できるように、財源の多様化や教職協働体制の充実により、安定した経営基盤を構築する。
 教職員全員がビジョンを共有しながらそれぞれの役割を果たす一体感のある体制であるか、また多様な学生・教職員にとって学びがい・働きがいのある環境であるかを絶えず見直しつつ、学生の学修成果や教職員のクオリティオブライフを高める。
 さらに、IRデータを活用してエビデンスに基づく企画立案・評価を行うとともに、多様なステークホルダーとの双方向の対話を通じてパートナーシップを深化させ、社会に開かれた大学としての機能強化を志向した環境整備を進める。
 RPA(Robotic Process Automation)などのデジタル技術を活用した業務フローの見直しを含むデジタルトランスフォーメーションを推進する。

 


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