附属施設

薬用植物園

植物園の目的と概要

 薬用植物園は、広島大学薬学部附属の教育研究施設として、霞キャンパスの薬学研究棟東側に設置されています。ここでは、薬学教育及び学術研究に資することを目的として、薬用植物を展示・栽培しています。
 標本園では約160種の植物種を保有しており、種々のハーブを含む薬用植物を栽培・展示し、温室では熱帯・亜熱帯地方などで育つ植物を展示しています。
 また、薬学研究棟6階には生薬標本棚があり、約400種の生薬の標本を保管しています。

  <沿革>
   1971年 薬草園(仮)を設置
   1980年 医学部附属薬用植物園を設置
   2006年 薬学部附属薬用植物園へ移行

職名 氏名
園長 黒田 照夫 教授
副園長 紙谷 浩之 教授
小川 恵子 教授
施設 広さ 備考
標本園 1,130 ㎡ 植物種 158種
(内訳)草本 84種
            木本 74種
圃場 660 ㎡
温室 130 ㎡
管理室 180 ㎡ セミナー室(24席)

教育への貢献

 薬学教育モデル・コアカリキュラムの達成目標の一つ、「自然が生み出す薬物」の基礎知識の習得を目標として、多種多様な薬用植物を育てています。
 2年次の「薬用植物学」では漢方処方に利用される生薬を中心に講義をし、3年次の初夏に行う「薬用植物学実習」では、2年次で習得した薬用植物の知識をより深めるために、実際に薬用植物園で栽培している植物を掘り起こし、それらの形態観察を行います。
 この他にも、処方鑑定などを含めた漢方処方に関連する実習を行っています。
 また、薬用植物園は日本生薬学会及び日本薬剤師研修センターの薬用植物園実習実施機関となっており、「漢方・生薬認定薬剤師」の資格試験のための実習を春・秋の年2回実施しています。
 このように、薬用植物園は学生の教育の深化に資するのみならず、薬剤師の卒後教育・生涯教育の一翼も担っています。

【形態観察例:シャクヤク】
 シャクヤクはトウキ(当帰)と並んで婦人科疾患によく用いられる生薬です。花はボタンと似ていますが、それぞれ、ボタンは木本、シャクヤクは草本の違いがあり、その地上部(写真左)が異なります。また、刻み生薬になった状態(写真中央)では全体像が想像できないため、掘り起こすことで植物本来の形状(写真右)を確認することにより、薬用植物に関する知識を深めることに役立てています。

ボタンの花と
よく似ています

漢方処方のときに用いられる
生薬の形

掘り起こした根

研究について

 薬用植物園では、研究用に多様な薬用植物を栽培し、植物の成分分析など広く薬用植物についての研究を行っています。
 例えば、同じ薬用植物の種でも、自生している地域や気候条件、地質などによって、成分が異なってくる可能性があり、これを採取して分類する行為は植物分類学的な要素といえます。さらに、その中からより多くの有効成分を含んだ種を選抜して栽培する農学的要素へと展開していくことも可能となります。
 現在、生薬の80%近くを中国からの輸入に頼っていますが、過去の乱獲により資源が十分とはいえない状況にあり、日本において薬用植物の栽培は必要不可欠となってきています。そのような背景からも、薬用植物栽培研究会の一員として栽培研究の一つである筒栽培を行っています。

【栽培研究例:筒栽培】
 カンゾウは漢方薬の約7割に配合される重要な生薬ですが、その多くを中国からの輸入に頼っています。しかしながら、上述した背景などから、国内での安定供給が必須課題となっています。

 カンゾウの筒栽培の有利な点は、梅雨のある多湿な日本においても土壌を乾燥気味に保てること、収穫時に手間取る一因である四方に広がるストロン(地面に水平に伸びる茎)を筒の中に閉じ込めたままで栽培ができる点です。現在、土壌成分などを変えながらカンゾウの実用栽培に向けて研究中です。

薬用植物園の一部紹介

Aristolochia debilis

ウマノスズクサ(Aristolochia debilis)を食草とするジャコウアゲハが毎年現れます。

Valeriana fauriei

別の植物カノコソウ(Valeriana fauriei)に寄り道中のジャコウアゲハ。

Cinnamomum cassia

温室で展示しているシナニッケイ(Cinnamomum cassia)はクスノキ科の植物で精油成分を含んでおり、古くから薬用だけでなく香料としても珍重されてきました。葉部よりも樹皮に強い芳香があります。
漢方では広く知られている葛根湯の構成生薬の一つです。

見学について

現在一時的に見学を中止しています。近日中に再開します。


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